Alissaの見聞録

Alissaの見聞録

紙を折ったり夜空を眺めます

連鶴 鼎、三つ巴

どうもAlissaです。

ようやくこの話をすることが出来ます。
これまで10作品余りを紹介してきましたが、今回紹介する作品に使われる技法がとんでもなく重要で、今後の作品の幅や理解度に関わってきます。
その前に、このブログの最初の方にお話したこの記事をもう一度読んでくださると、より今回の話が理解できると思います。
 

mkfalissa.hatenablog.jp

 



今まで紹介してきた作品は割と単純なものばかりでした。
いや単純じゃなかったよ!って思う方は、単純だなぁと思えるくらいまで連鶴作品を作り込んでください。嘘です。しなくて大丈夫です。
けれど、元は一枚の紙ですから、単純な繋がり方の作品数というのも限界があります。
よりたくさんの繋がり方を実現させるために、次のような方法を採ることがあります。


このように、1羽の鶴の翼の先に、まだ折っていない正方形を繋げたものを2つ作ります。
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妹背山の翼の切れ込みを深くしたものですね。
これらの正方形を重ね合わせます。緑の方が下になるように、そのままスライドさせただけです。
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この状態で、真ん中の正方形で鶴を折ります。
例えば、この2羽のそれぞれと繋がっている両端が翼になるように折れば、こんな感じで出来上がります。
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このように、元々別々の鶴の繋がりを、余白2枚の紙を重ねた上で折ることで一つの繋がりとするこの技法を重ね折りと呼びます。
この時の裁ち方図はこのように描かれます。
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少し省略して描いてますが、左上の2つが赤、右下の2つが緑、そして真ん中の2つを丸と線で繋いでいます。
他の方がどういう描き方をされるかわからないですが、僕は重ね折りをする2つをこのように繋いで描きます。今回は出てきませんが、その2つが離れていたり、複数箇所で重ね折りをする必要がある時は、番号を用いたりもします。
 
また、重ねる向き(角度)を変えれば
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このように様変わりします。従ってこの重ね折りは、どのように重ねるか、も重要なポイントと言えます。


しかし、「じゃあ重ね折りをしたからなんなの?この例だと最初から3羽が横に繋がってるように紙を切ればわざわざ重ね折りなんかしなくてよくない?」という疑問が浮かぶことでしょう。浮かんでください。

そうです。最初からそういう繋がり方をした紙を用意すれば重ね折りなんてしなくて良いのです。

お気付きですか。裏を返した言い方をします。
最初からそういう繋がり方をした紙を用意できない時に、重ね折りが必要になるのです。



どういうことか、その最たる例である『鼎(かなえ)』の紹介と共に説明をしていきたいと思います。
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3羽の鶴がそれぞれ尻尾とくちばしで輪を作るように繋がっています。
今回はクラフト紙を使用しました。質感いいですね。
 
狂歌は「やすやすと鼎を揚るちからあり 恋のおも荷をこれにくらべて」

鼎とは古代中国で用いられていた青銅器の入れ物です。調べてみるとすぐ出てきますが、「鼎」という漢字、思った以上に鼎そのままです。

鼎 - Wikipedia
 
裁ち方図はこう。
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はい。ここで重ね折りです。4分割されたうちの下の二枚を重ねて折ります。重ね方は、くちばしに当たる部分の黒い丸、翼の両端に当たる灰色の線がそれぞれ重なるようにします。
つまり、例えば右のほうを時計回りに90度ねじりながら、左のほうに寄せる、というイメージですね。
しかしこの時、当然上の二枚も引っ張られることになります。重ねた結果、
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こんな風に(見辛いですが)立体的になります。黒丸の先の3箇所がつながっていて、中心が手前に押し出ているような図です。(あるいは人によって奥にいってるように見えたりするのでしょうか。どっちでもいい。)
逆に言うと、このように立体的にしなければこのつながり方を実現するのは不可能なんです。
いや、ほんとに。「対角線どうしがつながっている」「3つの正方形」は2次元平面では絶対に作り出せません。
できるよ!って人は多分別の宇宙に住んでいる稀有な存在なので、早くNASAにでも捕まってください。
まあつまり、このつながりは2次元平面でできないということは、すなわち最初の状態の紙にこの形を落とし込んで切り出すことができないということになります。

完全に理解していただかなくても、「あ、構造上難しい箇所があるんだ~。ふ~ん」ってなってくれるだけでもいいと思います。



もう一つ、重ね折りを使った作品の紹介をしましょう。
三つ巴(みつどもえ
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3羽の鶴が翼全体をぴったりとくっつけて輪になっていますね。
これもまたクラフト紙です。

狂歌は「悋気から輪廻の廻る三つ巴 我を祭らん宇治の橋姫」

悋気(りんき)とは(主に女性の)やきもち、嫉妬を表す言葉で、三つ巴という名前からもヤバい雰囲気が容易に連想されますね。
下の句にある「宇治の橋姫」というのも、京都府宇治川にかかる宇治橋に祀られている橋姫という守護神を指していて、橋を守ってくれる一方で、他の橋を褒めたりするとめちゃくちゃ嫉妬するというなんともめんどくさい守護神様です。
調べてみるとここに書ききれないくらい話が深くなってしまったので、興味のある方はぜひご自分で調べてみて下さい。

作品の話に戻ると、裁ち方図はこうです。

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さっきと形はかなり似てますが、切れ込みの位置が違います。
ただ、重ね折りの仕方は全く同じです。

今度は対角線ではなく「3羽の翼が一点に集約」されなければなりません。さらに「ぴったりと翼全体をくっつけている」こともポイントです。

例えばこんな風に「3点でつながっているだけ」の場合、となりの鶴の翼とくっつく領域が少ないため、三つ巴みたいに翼が山のように盛り上がった作品はできません。

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もちろん、これはこれで一つの作品になりえますが、そもそもこんな形に切り出すのもめんどくさいですからね。なんか斜めってるし。




そんなわけで今回の2つ。
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元は同じ大きさの紙なのに鼎の方が若干大きく見えますね。目の錯覚みたい。



いかがでしたでしょうか。
重ね折りというのは非常に重要で、僕が今作っている秘傳千羽鶴折形以外の作品では、これなしには語れません。
その作品についてはまた折を見て紹介しようと思います。折り紙だけに


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以上で今回の記事は終わりになります。ここまで読んでくださりありがとうございました。