Alissaの見聞録

Alissaの見聞録

紙を折ったり夜空を眺めます

力強く走る話

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この度の石川県能登半島地震に被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
現在も厳しい状況が続いているとは思いますが、一日でも早く復旧することをお祈りしております。

2023年の総まとめとして本記事を書いていましたが、
このような形で交通インフラの重要性を再認識することになるとは思いもよりませんでした。
今もなお人命救助に尽力されていらっしゃる各方面の関係者の方々に多大なる感謝の念を抱いております。
記事は2023年の被災前の状態を写していますので、思うところがある方もいらっしゃるかもしれませんが、少しでもこの記事が暇つぶしにでもなればと思い、公開したいと思います。

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今年もよろしくお願いします。
Alisssaです。

2023年もいろいろなことがありました。
仕事、プライベート、充実した日々を送らせていただきました。

特に、「大人の自由研究」と称して、気になった事柄を一年間通して調査する活動を個人的に行っていたのですが、これがまたとても面白かったのでここにレポートとして残しておこうかと思います。

2023年のテーマは「鉄道」。

この研究のモットーとしては「普段自分が何気なく利用しているモノの理解を深める」こと。

鉄道(今ではその多くに電車が使われています)は「普段自分が何気なく利用している」最たる例だと思い、今回調べるに至ったわけです。

 

馬車などの単純な仕組みならまだしも、自動車の自動運転が実現目前であるような昨今、その技術は一般の人々が簡単に理解できるような代物では無くなってきています。
ですが、我々はそういった技術をうまく利用して、生活を豊かにすることが出来ている。

この食い違いに、自分は課題意識を強く感じています。

理解が及ばない高度な技術にもかかわらず、利用はできて、自信の生活の向上には役立てている。

駅などと呼ばれる建物に行ってしばらく待っていると、目の前に鉄の箱が滑り込んでくる。
何の気なしにその鉄の箱に乗り込むと、不思議と自分が行きたかった目的地の近くの駅という建物に着いてしまう。

そんな魔法のような世界だと思ってやしないか。

いや、魔法でもなんでもなく、これは先人の技術の結晶であり、
自分のような何も考えてない人間がその技術を簡単に享受できていいはずがない。

なぜこの鉄道が動くのか。いかにして目的地まで安全に走ることができるのか。

そういった原理を、技術を学び、自分の知識とすることで、
我々が利用している鉄道の解像度を少しでもあげようと考えたのです。


まぁただ、実際に行ったこととしては、各地に赴いて景色を見たりとか、レクリエーションのついでにちょっとした調べものだったりとか、楽しい旅行半分みたいなものばかりでしたが。

それでも、自分の中では多くの学びを獲得できたと思っていて、
明らかに2022年までの自分とは知識も意識も変わっているといえます。

勿論、いわゆる鉄道オタクの方や関係者・有識者から見れば「そんなこと常識だろ!」と怒られてしまうようなめちゃくちゃ基礎の基礎の事ばかりしか学んでないのですが、
逆に言えば、今までそういう基礎を知らなった人間がそういう知識を獲得して「もっと知りたい!」となるきっかけにもなりましたし、
もっと言うと、それまではそんな基礎すら知らなかった人間でも交通インフラとして鉄道を利用できてしまう、洗練された偉大な技術の結晶がそこにあるということが再認識できたともいえるでしょう。

そんな何も知らなかった人間が1年間で体験した、いろんなレポを良ければぜひご覧ください。

こちらの記事ですが、33000文字ある最強の一人語りになっております。
ご興味のある方は適宜目次を活用して読んでみてください。



 

JR大回り乗車

事の始まりは昨年の1月6日。
「暇だな。旅に出よう。」
ほんの思い付きでした。これが、1年間のテーマを決めるきっかけとなったのでした。


年末年始で実家に帰省していた僕は、まあ特にやることもなくゴロゴロしていたわけです。
友達との予定があるでもなく、ショッピングモールのバーゲンセールに行くでもなく、無為に時間を浪費して過ごしておりました。

普段の僕はこういう人生を是とする非常に怠惰な人間なのですが、時折「これはさすがにいかん!」と怠惰リミッターがアラートをあげる時もあってですね、それがこの時でした。

外に出て体を動かさねば!

しかし思いついたはいいものの、何をすればよいものか。普段が怠惰生活だとこういう時に暇つぶしの選択肢が思い浮かばなくて非常に残念です。

そんな僕が思いついたのは「JR線の大回り乗車」でした。

大回り乗車とは簡単に言うと、JR線区間内を一筆書きできるルートであれば、どんなに遠回りルートで乗車しても最短経路の運賃で乗車ができるという制度です。
140円払えば関東一周できる? JR線「大回り乗車」を楽しむ 制限や注意点も | 乗りものニュース

前々からこの大回り乗車をやってみたかったので、今回いい機会なのでやってみようと思い立った次第です。


まずは早速ルート構築。
この制度のルールとしては

  • JR線のみ
  • 一筆書きできるルートを通る(同じ駅を2度通ることはできない。)
  • 途中下車不可
  • 一日のみ(長すぎると時間的にoutの可能性)

また、+αで課した自分ルールとして

  • なるべく多くの路線に乗る

も含めて最も面白そうなルートはないか、探していきます。

東京近郊区区間
大回り適用の路線図

この、ルートを考える時間が一番楽しかったです。
どこの駅をスタートとゴールに設定するか、どの回り方で行くのがいいか。
単に一筆書きするだけなら簡単に構築できるんですが、
「多くの路線を乗る」ようにすると、「ここは行かなきゃいけない」とか「逆にここ行くと一筆書きできなくなる」とか縛りが効いてきて中々頭を使わされました。
RTAの最短ルート構築みたいなのにも通じるところがあるかもしれませんね。

そんなこんなで考えたルートが、
船橋~(京葉線)~西船橋~(武蔵野線)~新松戸~(常磐線)~我孫子~(成田線我孫子支線)~成田~(成田線本線)~松岸~(総武本線)~成東~(東金線)~大網~(外房線)~千葉~(総武線快速)~船橋


実家が千葉県なので千葉県を半周する形のルートになりました。
房総半島経由も考えましたが時間的に難しかったことと、木更津駅からの久留里線がどうあがいても一筆書きで戻ってこれない路線なので行く意味が薄いと考え断念。

これでも千葉県内を走るJR各路線のうち内房線久留里線を除くほとんどの路線に乗れています。
内房線に関しても、千葉~蘇我間を通っているためカウントするならば、完全に区間内を走っていないのは久留里線のみ。
突貫で考えた割にはいいルート構築できたと思っています。


そして、今回の旅のお供にはこちらを用意しました。

ただ各路線に乗って車窓からの眺めを楽しむのもいいですが、乗るからには電車についての知識も深めたいということで、kindle unlimitedにあったこちらの本でしっかり学びながら旅をすることにしました。

スタート~京葉線武蔵野線

そんなわけで準備を整え南船橋駅に直行!
大体午前11時頃でした。
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スタートが南船橋駅、ゴールが船橋駅のため、最短経路である西船橋経由の2駅分の運賃170円で今回のルートが乗れてしまいます。

船橋からの京葉線は乗り馴れているので特に目新しい景色はなかったですが、
そういった景色も改めて考え直してみると発見もあるもの。

この辺りには、南船橋(東側)から西船橋(北側)に抜けていく方面と、至東京方面(西側)とで三角形になっている形状があります。
いままでなんでこんな形してんねん!乗る電車間違えやすいやろがい!などと憤慨していたものですが、理由を調べてみるとなるほどと納得。

そもそも、武蔵野線都内中心部に貨物列車を流入させずに、都内近郊の外周を回って各地方に物資を届ける路線として計画されたようです。
JR東「武蔵野線」はなぜ生まれた?首都圏の“人と貨物”輸送を支えた50年史 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

武蔵野線の路線図を見てみると、わかりやすく首都圏外周を走っているのが見て取れますね。府中本町から鶴見までは貨物専用の区間。普段乗車していても鶴見行なんて聞いたことないですし、今回調べるまで存在も知りませんでした。

武蔵野線 - Wikipedia


こんな路線図なのも、都市部(山手線が走っているあたり)に貨物列車を入れないため。
確かに渋谷駅とかで貨物列車がブンブン走ってたら、2分に1本間隔で電車が来るあの山手線のメリットが活かせなくなりそうですね。
貨物列車と旅客列車の分業ができていて素晴らしいです。

そして、武蔵野線は営業区間の実に半分以上の駅で、他路線と接続しています。
中央線、東海道線埼京線常磐線京葉線など、地方に伸びる路線と接続することで、地方からの貨物を都市部に入れずそのまま地方に流す、バイパスの役割を果たしているのです。
京葉線二俣新町駅近くのこの形状も、「デルタ地帯」と呼ばれ、路線の接続を容易にしているようです。
鉄道あの頃 #24 武蔵野線の“デルタ”とは【動画】| NHK

武蔵野線には他にも西浦和駅新松戸駅周辺でデルタ地帯があるようです。(新松戸は地図で見るとデルタがないように見えるのですが、調べてもよくわかりませんでした。いつか実地に行って謎を解きたいです。)
 

普段自分の生活圏の中でしか電車を利用していないと、
そもそも貨物列車という存在すら頭から抜け落ちてしまいます。

自分が見えている範囲の外に目を向けて、「なぜこうなっているのか」を再考すると新しい発見があって楽しいですね。


あとこれは余談ですが、武蔵野線府中本町行のトラップに騙されてしまう人は多いようですね(笑)
上記の貨物としての役割を知っていると、このぐるっと回るルートも納得できて、騙されずに済む人も減るのでしょうか。
「東京発・府中本町行き」地図で見るとすぐそこなのに電車には壮大なトラップが隠れているから気を付けろ - Togetter


常磐線

そんなこんなで京葉線武蔵野線を乗り継いだら新松戸に到着!
常磐線に乗り換えます。
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ここから先の路線はこれまで使用したことがほとんどない、知らないことばかりの路線で、調べ学習も捗っていました。
常磐線緩行線快速線がある複々線となっていて、総武線とかと似たような感じでしょうか。
常磐線 - Wikipedia

こちらの記事にある

取手駅の次の駅・藤代駅の手前にはデッドセクションと呼ばれる交流・直流の切替区間がある。直流電化区間のまま延伸すると、石岡(茨城県)にある地磁気観測所のデータに悪影響を及ぼすため取手駅から先を交流電化区間にしたのだ。
そのため、常磐線の取手以北へ向かう列車は、高価な交直両用電車や電気機関車を用いなければならず、かつて電車はデッドセクションにさしかかると、電源切替のため一瞬室内灯が消えていた。現在の電車では室内灯が消えることはなくなったが、エアコンの電源が一瞬切れるため、耳を澄ませているとモーター音が数秒途絶える。

【JR常磐線のトリビア10選】本線ではなく支線、電車型のコンビニ、海が見える絶景ポイント [鉄道] All About
の、研究機関からめちゃくちゃシンプルに実害が出てる感じが面白かったです。

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複々線を楽しむ様子。
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そして我孫子駅に到着。
電車内で調べたところによると、我孫子駅のホームには有名な駅そば屋があるそうです。
ちょうどお昼時なのでお邪魔させていただくことにしました。

そのそば屋というのが『弥生軒』さん。
この溢れんばかりのクソデカ唐揚げが乗った唐揚げそばが人気とのこと。

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食べてみると、濃いつゆが染み込んだ衣が非常に絶品!
お肉もジューシーで、この時は唐揚げ1個乗せでしたが、2個乗せにしてもよかったかもと思いました。
揚げ物と合うように濃い味ながらもサラッとしたつゆと蕎麦もまたいいバランスでした。

ここのお店ですが、唐揚げそばに加えて、
『裸の大将』で知られる、画家の山下清氏が働いていたことでも有名なお店。

素敵な出会いに感謝しながら、次の成田線のホームへと向かいます。


成田線我孫子支線

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成田線ですが、ローカル線によくある単線でした。
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車窓から見る景色。

駅では上下線の線路が用意されていますが、駅間では線路が1本しかなく、上下線どちらも共通の線路を使う形です。
子供のころから都内や首都圏の大きな路線に慣れていると複線・複々線がほとんどなので単線は珍しい光景です。
幼心でも「上り・下り」の概念は理解していたので、2本の線路が向かい合っている様にはなるほどと得心していた分、単線を初めて見たときは「これでどうやって列車が行き来するんだ???」と疑問に思ったものです。

今まで雑な理解しかしていませんでしたが、今回改めてちゃんと仕組みを理解しようと調べました。

単線区間内で列車が衝突せずに行き来するために、「閉そく方式」が使われています。
イデアとしては、区間内に列車がいるかどうかを判別できるシステムがあればよいわけです。
昔は、区間に入ろうとする列車は区間端の駅でスタフやタブレットといった物理的アイテムを取り出し、もう一端の駅まで走行して反対路線の列車にアイテムを渡す、アイテムを持っていない列車は区間内に入ることができない、という非自動閉そく方式が採用されていました。
今では、区間内に列車がいるかどうかを電気信号で検知して、信号で列車の侵入を防ぐ自動閉そく方式が一般的なようです。
電車の閉塞区間って何!?その2


タブレット方式などは今でも採用している路線もあるみたいです。
しかし、やはりこれらはアナログな方式。駅員同士のやり取りがうまくいかなかったり、勘違いが原因となって、閉そく区間内に2本の列車が侵入、正面衝突してしまう事故なども過去には起こっていたようです。
人為的ミスで大事故が起きてしまうのは何ともいた堪れない気持ちになってしまいます。
そういった事故を教訓に、自動検知する技術が発展し、今では自動閉そくに置き換わっているのだと思います。
勿論自動検知が何らかの要因で正しく作動しない可能性があるので、完全に事故を無くせるというわけではないでしょうが、技術向上で事故件数が減っていっているとしたら、技術者たちには頭が下がる思いです。

そんなお勉強をしながら乗っていると次の駅に到着。
東我孫子駅のホームですが、珍しい形をしていました。
複線でよく見る形としては相対式ホームか島式ホームだとは思いますが、



 プラットホーム - Wikipedia

ここでは単線ホーム×2になっていました。
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奥に見えるのが反対方面のホーム

素人目には上二つの方式に比べて明らかに不便そうという感想しか出てこなかったのですが、何か理由があるのでしょうか。詳しい人がいたら教えてください。


あと、成田線は全体的に、理由はわからないですが走行音がめちゃくちゃうるさかったです(笑)

成田線本線

そんなこんなで成田駅に到着。
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看板がおしゃれ!
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ホームなが〜〜くてめっちゃカーブしてる〜〜
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改札上には成田山新勝寺の意匠と同じ紫の垂れ幕?があしらわれていました。
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この信号、通常の信号と違った見た目をしていますが、「中継用信号」というそうです。
この先にある主となる信号がカーブや勾配などで確認しづらい時、手前にこいつを設置して主信号と同じ指示を表示することで、補助する役割を持ちます。
感心したのは点灯の仕方。
普通の信号だと縦に一直線に並んだ信号の、色や点灯位置の順番で停止・進行などを判別する必要がありますが、
中継用信号では「点灯する直線の傾き」で停止・進行を判別できるようになっています。
多少見づらい位置にあっても「なんとなく横一直線に点灯してそう!停止だ!」と分かるわけですね。
色弱にも優しいし、いい工夫がなされてるなと思った次第です。

次に乗るのは同じ成田線でも銚子方面に向かう本線で、松岸駅まで行きます。
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しばらく走っていると、車窓から見える線路脇に「ズバコン」と書かれた看板が。

これは拾い画

ズバコン!?なにそれ!?
まったく見慣れない文字列が颯爽と過ぎ去っていく様に二度見せずにはいられませんでした。(二度目に見たときは当然遥か後方でした。)

調べてみると、夜間に保守用車両が線路上を走るときに、踏切の開閉動作をリモコンで行うようなのですが、その受信機が設置されている場所にこの看板もあるようです。
名前の由来としては、大昔のテレビのリモコン(リモートコントローラという名前さえなかった時代)に発売された「ズバリコントロール」という商品の略称から来ているそうです。
ズバコン - ありゃりゃサンポ

昔の名残があるにしたって、もっといい名前があったのでは(笑)と思わずにはいられませんでした。

調べ学習とか本とにらめっこもしてましたが、地図も一緒ににらめっこ。
沿線に何かないかと見ていると大菅踏切事故慰霊碑なるものを発見。

過去この場所にあった踏切にダンプカーが進入し、電車と衝突したことで多くの死傷者を出す大事故が起こったそうです。
踏切障害事故 - Wikipedia

地図に見える江戸崎下総線は急こう配になっていたこと、当該ダンプは最大積載量の4倍の積み荷を積んでいたことで、停止線で止まり切れずに踏切に進入してしまったものとみられています。

JR東日本はこの事故や、それまでの各地の事故を教訓にして、
車両前面に衝突時の保護目的のステンレス板を取り付ける強化工事を早急に進めたとのこと。他にも運転室から運転士を救出しやすいような構造に設計変更したりもしたそうです。
事故が起きないに越したことはないですが、起きてしまった時、
「次を起こさないためには」
「起きてしまった時に致命的にならないためには」
人間として考えるのを辞めてはならない意義のある課題ですよね。

こちらの記事にあるこの言葉が響きました。

人身事故が起きた時だけ、運転者や雇用主、荷主を悪者とし、被害者を「運が悪かった」とするのではなく、普段から重大事故につながるような危険な要因を見極める眼を持ち、取り除く努力をしなければならない。

【現役トラックドライバーが斬る!】過積載はなぜなくならない!? 重大事故から学ぶべき対応策 - 自動車情報誌「ベストカー」

僕も今は技術者として仕事をしていますが、自分の過失がすぐに多くの人命につながるほどの大きな技術を担っているわけではありません。
運転士さんや鉄道関係技術者の方は、自分の仕事がそのまま安全に直結するということで、プレッシャーなど比べ物にならないかと思います。
そんな人たちの努力のおかげで僕たちのような一般人が安全を享受できていると思うと、本当に感謝の念しかありません。


成田線は支線含めて難読駅名が多いなと感じました。
「安食(あじき)」、「椎柴(しいしば)」、「木下(きおろし)」や、よく難読地名として引き合いに出されるため逆に有名になっているけど知らなかったら普通に読めないよなあとなる、「我孫子(あびこ)」、「酒々井(しすい)」など。

ただ難読ならいいんですが、僕がキレたのは以下の2駅。
我孫子支線にある「下総松崎」。
普通に読んだら「しもうさまつざき」かな?と思いきや実際の読みは「しもうさまんざき」。
なるほど・・・。そういう読み方もあるのかと学習。
その後しばらくすると「下総神崎」に遭遇。
ははーん!似た読みをさっき学んだんだ!「しもうさかんざき」だろ!と思ったのも束の間、正しい読みは「しもうさこうざき」でした。
どう考えても初見殺し過ぎる。


総武本線

多くの学びがあった成田線も終わり、松岸駅に到着。
成田駅同様オシャ看板でした。
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田舎なのにホームなげ~~~~~
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ここから総武本線に乗って成東駅まで行きます。
この辺りまで来ると、成田線もそうでしたが、1時間に1本とかしか電車が来ないのはザラなので、何もないホームでブラブラ時間をつぶしていました。
5分に1本電車が来る生活に馴れすぎている。
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東金線

総武本線では新しい発見を見つけられず、気づけばすぐに成東駅に到着。
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ここで珍しい「0番線」を発見!
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これはどういうことか言うと、線路の何番線というのは、駅舎に近いほうから順に割り振られていくのですが、
何かの理由で新しい路線を引くとき、それまでの1番線と駅舎を挟んで反対側に増設するときに数字の都合上0にしているみたいです。
 0番線・0番のりばのでき方
こういう「0」は中二心をくすぐられますね。

そしてホーム形状も珍しい切り欠きホーム。
上で引用したWikipidiaにも解説がありますが、0番線ホームには多い形状。
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さっき調べたばっかのものがすぐ実地で確認できた!進研ゼミで見たところだ!と思わずにはいられませんでした。

しばらくすると東金線が到着。写真でもわかりますがだんだん日も落ちてきて寒さが増してきたのでさっさと乗り込みます。
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東金線の名の通り途中には東金駅があるのですが、昔はこの東金駅から九十九里浜の片貝まで「九十九里鐵道」が運行していたようです。今は廃線となって軌道跡の一部は遊歩道に整備されています。
見に行ってみたかったですが、生憎今回の旅は途中下車不可。諦めて通り過ぎます。

外房線総武快速~ゴール

大網駅に到着!微妙な角度の写真しか残ってなかったです。
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大網駅ですが、路線図を見るとカーブした外房線と同じくカーブした東金線が接するような形をしています。


ですが実はこの大網駅は1972年に移設した後の位置。開業当時は少し北東、現在の東金線方面に少し進んだ位置にあったようです。

房総東線 旧大網駅跡

千葉方面の路線と、一宮・勝浦方面の路線がV字型になっています。
このような形状になってしまったのには諸説あるようですが、この影響で、千葉方面から来た外房線が一宮・勝浦方面に抜けていくためには、列車の方向転換が必要でした。

当時は蒸気機関車(!)で動力のない客車を牽引していたため、進行方向を変えるためには、蒸気機関車を転車台で方向転換して、逆側の客車に接続しなおしてからまた牽引して走っていく・・・
というプロセスがかかっていたのです。
転車台 - Wikipedia

大網駅の外房線と東金線のホームが離れているわけ - まっぷるトラベルガイド


この方向転換が面倒・時間がかかるなどデメリットが多かったため大網駅は現在の場所に移設され、方向転換が不要な線路になったという経緯があるみたいです。

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これは東金線ホームから外房線ホームを見た景色。
今では便利になったこの線路も、昔は不便ながら利用していた歴史があると知ると先人たちの苦労が伺い知れます。
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外房線の湾曲したホーム。

そして総武快速直通の外房線に乗り込み、ようやく、ゴールである船橋駅にたどり着きました!
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まとめ

17:30頃に到着したため、スタートからは6時間半ほど経っていました。
途中の成田線で1時間ほど電車が来ない時間がありましたがそれでもかなり長い時間電車に揺られていたことになります。
普段乗ることのない路線にも乗れて、いろんな景色を見て、知識もゲットできて、非常に有意義な一日を過ごすことができました。
次はまた別のルートで大回り乗車の旅をしてみたいと思っています。

東京メトロ 地下謎への招待状

次は、東京メトロについてのレポです。
ここでのレポは「地下謎への招待状(以下地下謎と呼ぶ)」という、東京メトロ各路線を舞台にしたリアル謎解き街歩きゲームを体験したついでに、東京メトロについて調べた内容をまとめていきます。

地下謎についての詳細ですが、
謎解きキットとともに東京メトロ全線乗り放題チケットを購入し、各地のメトロ駅や周辺の街に向かい、謎を解いていくというもの。
謎を解くとその答えに従って「次は〇〇駅に向かえ!」などの指令が出るので、大都市東京を舞台に各地を駆けずり回るところが非常に面白いアクティビティです。
移動は乗り放題チケットがあるので、メトロのいろんな路線を利用できます。
もちろん、謎解きの方もちょうどいい難易度で、当日は計8時間くらい費やしていました。(移動や食事休憩も含む)

現在も開催しているため興味がある方はぜひ遊んでみることをお勧めします。
【公式】『地下謎への招待状 2023』(地下謎)


そんなわけで2月24日、以前もこのブログに出てきたKとともに地下謎をやってきました。
お供はこちらの本。


東京メトロの路線図はこちら。

路線・駅の情報 | 東京メトロ


自分は現在小田急線沿線に住んでいるので、一番近いメトロ駅は代々木上原駅です。
最寄駅からSuicaで乗車して、代々木上原駅に着くといったん改札から出て乗り放題チケットで入りなおします。
集合は上野駅だったのですが、せっかく乗り放題チケットがあるので、こんな感じでちょっと寄り道しながら向かうことにしました。

代々木上原~(千代田線)~明治神宮前~(副都心線)~池袋~(丸の内線)~大手町~(半蔵門線)~三越前~(銀座線)~上野

最短経路なら代々木上原~(千代田線)~日比谷~(日比谷線)~上野の2路線で行けるところなのでだいぶ大回りしてますね。

寄り道していく中で本やら検索などで初めて知ったことなどをちょこちょこ書いていきます。

千代田線

千代田線は代々木上原から綾瀬までを繋ぐ路線で、車体に走る緑のラインが目に優しいです。
上に書いたように小田急ユーザーとしてはメトロに乗り換える際にほとんど必ず使うのでなじみ深いです。
常磐線小田急線と直通運転もしています。そのため、千代田線内に小田急ロマンスカーも乗り入れしてくることもあるそうで、地下鉄を特急列車が走るという光景も目にすることができるみたいです。
ロマンスカーは一度だけ乗車したことがあるのですが、新幹線のような乗り心地の良さと速度に感動したのを覚えています。

副都心線

副都心線は和光と渋谷を繋ぐ路線で、和光~池袋は有楽町線と並走しています。
埼玉県民になったことはないのでわかりませんが、赤羽岩淵駅がある南北線と並んで埼玉県民のメトロの入口って感じなんでしょうか。ここは地元民に聞いてみないとわかりませんね。
その名の通り副都心=池袋、渋谷、新宿(新宿三丁目駅)を通る、メトロでは一番最近開通(2008年)した路線です。
東京メトロ東京地下鉄株式会社)が民営化によって発足したのが2004年で、それ以降に開業した最初で(今のところ)最後の路線のようです。
というか、今年2024年ってメトロ民営化から20周年なんですね。これは熱い。

銀座線&丸の内線

銀座線は日本で初めて開通(1927年)した地下鉄で、側面の鮮かな黄色と屋根の茶色の塗装が特徴的ですね。

初めての地下鉄ということで、当時の技術的にあまり地下深くまで掘ることができず、銀座線は比較的浅い高さで走っています。
そのため、海抜の低い渋谷駅では、「地下鉄」でありながら地上3階に相当する高さに銀座線ホームがあるというなんとも面白い状況になっています。
ちなみに、都心のメトロ内で地上駅があるのは(他路線直通駅を除いて)、丸の内線の四ツ谷駅茗荷谷駅後楽園駅となっています。
丸の内線は銀座線の次に開業したこれもまた歴史の古い路線で、同じように浅いところを走っているため窪んだ土地では地上に顔を出す、というわけですね。
後楽園駅などは何度も利用したことがあったのですが、言われてみるまで地下鉄なのに地上にあることに疑問も抱きませんでした。学びなおしって大事ですね。

四ツ谷駅などが低地になっている理由ですが、
遡ること江戸時代、当時の幕府が街の水道を整備するために川の流れを変えたり引いて来たりしたことで街の形や高低が変わった名残によるものだそうです。
丸ノ内線の地上走行は徳川家康のせいだった 東京の地下鉄が地上に顔を出す歴史的背景 | 通勤電車 | 東洋経済オンライン
交通インフラについて調べていたら地理や歴史もクロスオーバーしてくるところがとても面白いです。知識、増やしたいですね。

銀座線の集電方法も他の路線と変わっています。
当たり前ですが、「電車」は「電気」で動く車両のため、どこかから電気をもらってくる必要があります。
一般的な電車は、線路の上にトロリー線(架線)と呼ばれる電気が流れている線があり、車両の屋根に取り付けられたパンタグラフ接触させて車内に給電を行っています。
多くの人がこのパンタグラフは見たことあるのではないでしょうか。

ですが銀座線では、またしてもその技術ゆえにあまり大きなトンネルを掘ることができず、架線を張るだけの天井高さを確保できなかったようです。
そのため、車両が走る2本のレールの横に同じような電気が通るレールを引き、レールにコレクタシューを接触させて集電する『第3軌条』という方式が使われています。
上に電線がないのに電車が走る 地下鉄に多い「サードレール方式」のメリットとは | 乗りものニュース

そして先ほどと同じような理由で丸の内線でもこの方式が使われています。
実際、大手町からの丸の内線の線路を見てみると第3軌条のレールがあり、代わりに架線がありません。
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知識を実地で確認できた時が一番気持ちいです。

半蔵門線

半蔵門線は渋谷から押上までを結ぶ路線で、車体のカラーは紫です。
特徴的なのが、半蔵門線他のメトロ8路線および都営地下鉄4路線全てと、どこかの駅で乗り換えが可能という、めちゃくちゃ便利な路線となっています。

開業は2003年と比較的新しく、そのため開通時は既にある路線や水道などのライフラインを避けて通らなければならず、自ずと地下深くを通ることになります。
#284 都内の地下鉄はどれぐらいの深さを走っているのか調べてみた - どらったら!!
先述した丸の内線が地上近くにあるということで、丸の内線から半蔵門線の乗り換えはかなり高低差があります。
この日は大手町で乗り換えましたが、クソ長いエスカレーターを2個も下ってようやくホームに着きました。

開業時期の差という「歴史」と、深度という「地理」の二つの学問の架け橋がこのエスカレーターなのか~
と、謎解きよりも謎な発言をしながら乗っていました。

最近、地理の重要性を感じ始めています。
その土地の特徴によって食や文化なんかを理解できるし、地政学という学問もある通り他所と交易をするときの背景もわかってきます。
というわけでおすすめのYoutubeチャンネルを貼っておきます。
地理の雑学ゆっくり解説 - YouTube


まとめ

謎解きに夢中になっていたため、全体的に写真が少なかったり、後半に乗っていた路線の調べ学習は少なくなってしまいました。
それでも、地下鉄ならではの事情を知れたり、交通インフラという事業がその土地の地理や歴史と密接に、想像していたよりも密接に関わっていることを改めて感じることができて、個人的には一挙両得の一日でした。
こういう土地に根差した遊びはもっとやっていきたいし、もっと増えていってほしいです。

SL銀河

次は、2023年で最も思い出に残った、『SL銀河』の乗車レポを書いていきたいと思います。

SL銀河とは、岩手県花巻市から釜石市までの約90kmを走る、蒸気機関車(SL)牽引の観光列車です。
東日本大震災の復興のシンボルとして、盛岡駅で静態保存されていたC58形蒸気機関車239号機を修復して走らせることになったのが始まりです。
客車の外壁や内装は、岩手出身の作家である宮沢賢治の代表作の一つ『銀河鉄道の夜』をモチーフにしています。
2014年4月から臨時快速として運行を開始し、2023年6月に客車の老朽化のため、運行を終了しました。

かねてからSLに乗車するのが夢だったこと
宮沢賢治が好きなこと
2023年で運行を終了してしまうこと
なにより、今年のテーマとして最も相応しく、乗らないわけにはいかない!と思い、岩手への遠征を決意しました。

兎にも角にも決めたら行動!ということでJRのHPから乗車チケットを購入していきます。が、1番の難関はここでした。

SL銀河は土曜日に往路(花巻から釜石)、日曜日に復路(釜石から花巻)の一本ずつのみの運行であることと、
例年でも冬シーズンは休業しており、開始は4月からな上、終了は6月予定ですが6月は特別便で一般客は乗れないため実質4,5月の土日のみ。
加えて終了直前のためチケット競争率も高い。
一応、先着順ではなく抽選制だったのは救いでしたが、それでも何回も予定日の抽選を外しまくった末にようやく復路のチケットをGETできたのでした。

旅程としては、
金曜:東京で別の予定があったためそのまま東京のホテルin。
土曜:朝東京駅から東北新幹線に乗り、岩手県は花巻へ向かう。レンタカーで釜石まで移動して観光したのちホテルin。
日曜:朝SL銀河に釜石から乗車し、夕方に花巻着、そのまま新幹線で東京に帰る。

往路も乗車したかったのですが、花巻発が朝9時ごろのため前泊必須でしたが金曜の予定があるため断念しました。


1日目

そんな苦労もありながら、来たる4月22日、東京駅に降り立ちます。
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はやぶさ・こまちに乗車

苦労して手に入れたチケットも事前に発券しておきます。
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新幹線の発車時刻より少し早めに着いてしまったので、他の新幹線などものぞき見しておきます。

こちらは北陸新幹線
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2015年に長野~金沢間が開通して、北陸がとても近くなったことは記憶に新しいですね。友人たちがこぞって金沢へ旅行し金粉ソフトを食べていたことを覚えています。
また、2023年度末には金沢~敦賀間も延伸開業予定とのことです。
福井県民にとって初の新幹線駅は胸躍る事業かもしれないですね。
北陸新幹線プロジェクト:JR西日本
敦賀は明治時代に早くから鉄道が開通したり港としても繁栄していて、日本海側の交通・交易の要衝として栄えていた土地ですが、新幹線開通が他所より遅いのは何か理由があるのでしょうか。
海を越えた鉄道|日本遺産ポータルサイト

こちらは山形新幹線
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そして今回乗車する秋田新幹線東北新幹線
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秋田新幹線の赤い車体が目立ってますね!

早速乗り込んでいきます。

車内でのお供はやはり銀河鉄道の夜。短編集です。
僕は『ビジテリアン大祭』が好きです。銀河鉄道の夜じゃないのかよ。


仙台に到着!ここで東北新幹線に乗り換えます。
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これまで乗ってきた車両。
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秋田と東北新幹線ががっちゃんこしてます。

仙台駅には地面にこんな車両の案内が描いてありました。わかりやすい!
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滑り込んでくる東北新幹線
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お昼ご飯はお弁当です。
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そんなこんなしているうちに13時頃に新花巻駅に到着!テンション上がって写真を撮り忘れています。

ここからレンタカーを借りて、釜石までの80kmを走り倒していきます。
ちょっとでも往路を感じるために、釜石線の線路沿いに国道283号を走ることにしました。(下道で経費削減の意もある)
なのですが、車のナビをどんなに設定しても高速に乗らせようとして譲らない。
結局20〜30分も新花巻駅近くでぐるぐる回ったのち、仕方なくスマホのグーグルマップのナビで設定しなおしました。
ただ今思うと、実はここでタイムロスしたのは、後述するとある理由で割と幸運だったかもしれません。

走り出した後は快調に進んでいきます。
一人のドライブの良いところは爆音で好きな音楽を流しながら下手っピなカラオケ大会を開催しても誰にも何も言われないところですよね。
逆に一人のドライブの良くないところは走りながら景色の写真を撮れないことですよね。
道中、朝に出発していたSL銀河に追いつき、
この洞泉駅近くの高架をちょうど走っていくところにピッタリ遭遇できたんです!ナイスタイムロス!

周りには車を停めて既にカメラを構えている人もいくらか居たくらい、ちょうどいいフォトスポットだったようです。
当然僕はピッタリ過ぎて写真を撮れませんでした(泣)

その後も少し走って、小佐野駅近くでSLと並走もできました!
今回は信号も手伝って何とか写真も撮れました。
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写真に夢中になって前の車と車間距離空いてます。普通に迷惑なのでやめましょう。

黒煙を吐きながら市街地を雄大に走るその姿は圧巻でした。明日実際に乗るんだからネタバレやめてね。

そんな紆余曲折あったドライブも終わり、15時ごろに釜石駅に到着しました!ここからは特に制約もなく観光をしていきました。

まず向かったのは「鉄の歴史館」。

観光サイトから
鉄の歴史館 - 【釜石の観光 かまなび】釜石観光物産協会公式サイト

釜石では古くから製鉄が行われており、明治時代には西洋から伝わった最新式の製鉄炉を日本で初めて導入し、製鉄産業で栄えた「鉄の町」と言われています。

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入口にはSLが展示されていますが、今回の目的であるSL銀河ではありません。
釜石鉱山鉄道という、採鉄所があった大橋と、製鉄所が置かれた釜石(港の桟橋)までを繋ぐ路線で使用されていたSLです。
実は日本で三番目に開業した鉄道なんですが、製鉄所の閉鎖に伴って廃線したり再度個人経営で復活したりと変遷がすごい路線です。
まったく同じ線路が使われているわけではなさそうですが、今は釜石線が釜石~大橋間を大体同じ路程で走っているようです。
釜石鉱山鉄道 - Wikipedia

入口で時間を使っていてもあれなので早速館内へと入っていきます。
中には種々の鉄鋼の形成やら鉄が使われている製品の見本やらたくさんの展示がありました。
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また、原寸大製鉄炉模型を使った製鉄の手法や歴史を解説するシアターもありました。
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ここがめっちゃ勉強になって感動してたはずなんですが、シアターの中でメモを取るわけにもいかず今ではほとんど覚えてません。台無し。

これは燭台ですが説明が面白すぎます。当時の最先端の材料だろうに遊ぶなよ。
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鉄道関係では
上で紹介した閉塞用のタブレット
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鉱山鉄道のレールもありました。
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そしてこれが一番衝撃を受けたのですが
太平洋戦争にて、釜石は重要な鉄の生産拠点として度重なる砲撃を受けて壊滅的な打撃を受けたとのことでした。こちらが被弾の痕跡(家屋の破片)。
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こんなレベルの破壊が1日に2000発強!も行われていたと思うと想像を絶します。

本当に失礼ながら小生は歴史にも疎く、戦中の大きな被害は原爆と東京大空襲くらいしか知らなかったのです。
でも釜石が狙われるのも当然。鉄は武器、交通、重工などを始めほとんど全ての生産活動の柱となっていて、その最大生産拠点ともなれば、敵国が潰そうとするのは理に適っています。

襲撃を受けた当時の方々とこの事実を知らなかった自分に胸を痛めつつ、現在の日本の生産を支えてくれていることに感謝しました。

他にもたくさん展示があったのですが閉館の時間が来てしまったので1/3くらいは流し見になってしまいました。
入口近くに置いてあった、ネジやボルトでできた人形が楽器演奏をしているところがとても可愛かったです。がんばれボルタ君。
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鉄の歴史館を出た後は、ホテルまでまだ時間があるので近くの根浜海岸へ行きました。
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夏は海水浴場としても賑わう場所のようですがこの時はまだ4月。
とんでもなく激しい海風が吹いていて凍えそうでした。

この海岸も東日本大震災津波被害に遭った場所。
この時よりもさらに冷たく暗い波に成す術なくのまれてしまったのかと思うと居た堪れません。
犠牲者の方々に合掌して、釜石駅に戻ります。

レンタカーは釜石で乗り捨て、ホテルは素泊まりにして夕食は外へ。
釜石ラーメンと、海鮮居酒屋に立ち寄って熱燗とカニ味噌を堪能しました。
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本題に入ってもいない1日目でかなりの文章量になってしまいましたがめげずに書いていきます。
そしてここまで読んでくださってる変人の方々もよければ引き続きお付き合いください。2日目は見応えあると思います。

 

2日目

朝9時。ぬけるような青空が眩しい最高のお出かけ日和になりました。
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ですがさすがは東北。4月下旬にもかかわらず最高気温12℃しかありません。クッソ寒い。

SL銀河の出発時刻は9時57分でしたが、もう既に機関士の方が出発の準備を始めていました。
駅のホームにはまだ立ち入れませんでしたが、線路沿いにある「シープラザ釜石」の裏手からその様子を見ることができました。
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水・石炭の補充と点検終えたSLがバック走行してきます。右奥に見えている青色の建物が車庫です。さらにその奥には黄色い転車台が僅かに見えています。
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ゆっくりと後進
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前から
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客車と連結

全景としてはこんな感じ!かっこいい!!!
黒光のボディが晴天の青に映えますね!
激・逆光だったので明るさ補正してます。
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ご尊顔もご立派
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通常の釜石線との2ショット

準備が終わったので駅舎に入っていきます。

発車標の列車名表示が「SL銀河」になっていて、ロゴもちょっとおしゃれになっていたり、
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駅のホームに続く道はプラネタリウムのような凝った仕様でした。
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ホームに出ると堂々と屹立する車両たち!
銀河鉄道の夜をモチーフに、黄金色の星々や動植物たちが濃紺の夜空を模した車体に所狭しとあしらわれています。銀河鉄道の最初に登場する白鳥座は4号車(最後尾)、終盤のキーとなるさそり座は1号車(先頭)にあり、最後にカムパネルラが向かったと思われる石炭ぶくろと現実で落ちた川をSLの石炭と水と捉えるなら、車両全体で物語を表現していると言ってよいでしょう。先頭車両に行くに従って青色のグラデーションが明るくなっていく(=空が白んでいく?)ところも、時間の経過を表していそうです。
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テンションブチ上がってる
普段乗っている電車よりも圧倒される重厚感があるように感ぜられるのは、その特別仕様の外装の荘厳さからだけではないのでしょう。この車両たちには、多くの人々の期待感を乗せて走る大役の責任があるからこそ、その重圧を果てしない魅力に昇華できているのかもしれません。

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それからこの客車ですが、先頭と最後尾がディーゼル動力付きの気動車になっているようでした。SLに牽引されるのに動力が必要なの?と思いましたが、走行区間中にある急勾配を登攀するためにSLと合わせて気動車も動かす補助の役割があるみたいです。他の地域のSLでは動力なしの客車が多いっぽいのでここもSL銀河の特徴の一つなんですね。
機関車より貴重?SL列車の「客車」が足りない 旧国鉄車両は老朽化、新車投入は高コスト | 特急・観光列車 | 東洋経済オンライン



車輪など。近くで見ると生々しい機構してますね・・・。これはエロい・・・。
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石炭も山積み!に見えますが、蒸気にするための水がこの下に大量に積まれているとのこと。後で触れますが水の消費量の方がよっぽどエグいです。
ちなみに改札入場の時に石炭のおみやをいただきました。僕もこれを食べて黒煙を吐きながら日々の仕事に邁進したいと思います。

見物を続けているとSL撮影会が始まります。
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運転士さん
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ワタクシ
駅員さんに撮ってもらいました。並んで立つと迫力がすごい!この一年の1番の思い出になりました。
ちなみに加工で隠れてますが、寒さと眠さでとんでもない顔をしています。

一通りバシバシと写真を撮り終わるとついに出発の時間。乗り込んでいきます。
席に着いて間もなく、大きく唸る汽笛が聞こえてきました。鼓膜よりも肌身が震えるほどの轟音。次第にじわり、じわりと車体が滑り始める。あんなにも巨きくて重い塊を動かせるというのだからものすごいトルクです。
ブログでは伝えることが出来ない音と蒸気のエネルギーを全身で感じ、胸がいっぱいでした。
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ホーム先端には駅員や地元住民の方々からのお見送りが。
SLの力に感動しているところに暖かい気持ちを受け取ってしまって超絶おセンチになりながら、心の中で行ってきますを唱えたのでした。

スピードが乗ってきたSLは釜石駅を抜け、最初の停車駅である陸中大橋駅に向かいます。この駅がまさに上で触れた鉱山鉄道の積み込み駅。廃線跡も残っています。
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そして、エグい急勾配区間でもあります。高度を稼ぐために折り返す線路になっていますが、地図を見ると一目瞭然、通称オメガ(Ω)カーブ

周りは完全に山地なのでそりゃ簡単には登れんわな。
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陸中大橋を抜け、上有住駅(特に何もなかったです)の次は遠野駅に到着。
ここでは乗客の昼休憩を兼ねて、SLの点検&燃料の補給タイムになります。釜石から遠野までの大体40kmを、約1時間半かけて走ってきたSL。SLの燃費は1kmあたりおよそ水100リットル(=100kg)、石炭40kgとのことなので、ここまで水4トン!と石炭1.6トン!が消費されたことになります。(実際は坂道も登ってきたのでもっと増えてるでしょう)
https://www.kyotorailwaymuseum.jp/amusement/dissected-sl/faq/
一人暮らし何日ぶんの水道料金に当たるのか想像するだに背筋が凍りますね。

一旦客車とSLの連結を外して行うのですが、SLがいなくなった後が煤だらけで笑ってしまいました。
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顔面真っ黒ですよ

枕木の代わりにあるこの溝は「アッシュピット」という石炭の灰を処理するところみたいです。
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補給の様子。ホースで繋いで水を貯めています。
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作業員さんにわちゃわちゃ点検されてるSLくん。たくさんの人にお世話してもらっている様が愛らしかったです。
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SLがお腹を満たしている間、自分もお昼ご飯を食べることにします。1時間強の長い休憩時間のため、遠野駅のみ改札外に出て観光が許可されていたので早速向かいます。
改札には歓迎の看板が飾ってありました。
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…………

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改札を抜け街に繰り出したわけですが、いかんせん寒い!釜石で12℃でしたが、遠野は驚異の7℃!真冬の東京だってこんなに寒くない。遠野は山に囲まれた盆地なので致し方ないですが。。
ちなみに2日前に東京では26℃の夏日を記録していました。この寒暖差は都会っ子には堪えます。

暖を求めてお昼は「ひっつみ汁」にしました。
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小麦粉を練った生地と野菜を煮たいわゆるすいとんのような岩手の郷土料理。
非常に出汁が濃く塩味も効いているので、特にお肉類が入ってない野菜だけなのにバクバクとご飯が進みます。ひっつみにも味が染みているので水餃子みたいな感覚でご飯と食べられます。
とても満足なご馳走をいただくことが出来ました。が、コップがフリーザ様だったのが終始気になってしょうがありませんでした。
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何故

それから、遠野といえば、民俗学の父として知られる柳田國男がこの遠野の地に伝わる民間伝承、信仰や妖怪の類について整理しまとめた『遠野物語』でも有名な地。そのため(特に)河童がこの街のマスコットになっています。
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だからと言って嘘をつくのは良くないと思います。

余った時間は観光センターやとおの物語の館などをチラ見して、再び遠野駅に戻ってきました。
ホームには補給を終えて準備万端なSL銀河。残り半分の路程も頑張って運んでいただきましょう。

ここいらで、客車の内装についても触れておきます。
座席部分はレトロな雰囲気。柱の意匠や荷物棚上のステンドグラスも素敵です。
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客車の合間には宮沢賢治にまつわるギャラリーもありました。
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銀河鉄道の夜の複製原稿。字が汚い。
有名な話ですが、銀河鉄道の夜は複数稿存在し、また未完成のまま賢治は没しています
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雨ニモマケズの複製手稿
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下ノ畑ニ居リマス
賢治は農学校を卒業した後に農学校の教諭を務め、そのうち自らも農作業を始めるようになります。実家は農家ではなかったようですが、農の自然の中で感性が育まれた、賢治の世界観が伺えます。
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教諭時代のノートなどの焼き直しか何かでしょうか。今日の義務教育で学ぶ原子から宇宙、生物、地質など、当時では幅広い知見を持っていたことが見て取れます。
賢治はこのように自然科学の素養がありますが、作風はリアリストというよりスピリチュアルな世界観が魅力です。主人公が鷹や蛙などの動物だったり、天上におわすふたご座のお姫様の物語、果ては鉄道の信号機どうしの恋愛(!?)なんかもあるくらい、世界の万物に魂を見出していたみたいです。彼が理想郷とするイーハトーブはこのような動植物や無機物までもが語りかけてくる神秘の世界だったかもしれません。

長かった旅路も終わりに近づき、花巻駅へと入っていきます。
ここでも多くの住民の方々の歓迎を受け、長く険しい道のりを走ってきたSLを労ってくれました。
駅の看板も歓迎の印を掲げてくれています。
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…………

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改めて、ここまで約80kmの長い距離を渡してくれたSL銀河に感謝!
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まとめ

旅程と同じくらい長いレポになってしまいましたがいかがでしたでしょうか。
この旅で強く感じたのは、SL銀河がさまざまな人に深く愛されていることでした。

まずは地域住民の方々。
車窓から見える人はほとんどがSLを発見するなり手を振ったりスマホのカメラを構えたりと、心を輝かせているようでした。
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絶好のフォトスポットである宮守駅付近の眼鏡橋
中には、沿線の家の窓から身を乗り出して赤ちゃんと一緒に手を振ってくれたり、農作業をしていたであろうご老人も手を止めて遠い目をして眺めている光景も目にしました。それほど多くの人が楽しみにしているのが分かりやすく伝わってきて、全然関係ない僕も感無量でした。

毎週末にこんな風に特別便が走っているような地域で過ごすことができていたなら、「昔走ってたSL銀河、めちゃくちゃ良かったよね」という話題を肴にして死ぬまで酒を飲めそうです。
釜石駅にはSL銀河のこれまでの運行を称えるミニチュアがありました。
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上でも述べた通り、東北の復興のために第二の人生を走り始めたSL銀河。地元を盛り上げるために一緒に歩んできた、特別な想いがあるのかもしれません。


次に、運転士駅職員をはじめとした関係者の方々。
そもそもが、SLは燃費も悪ければ輸送力も低く電車に比べてコスパが悪すぎるのは事実。おまけに、とっくに製造中止している車両のため、部品が老朽化しても新品を使うわけにはいかず、全国のどこかに静態保存されている同じ型の車両(いわば兄弟)と交換してなんとか耐え凌いでいるのが現実です。
そんな中こうやって特別便でも運用して下さるのには感謝しかないですし、観光目的の経済効果以上の「想い」があるからなのではと思わずにはいられません。
SLは運転するのも一筋縄ではいかない。温度・湿度、乗員数、その日の調子によって石炭の焚べ方やアクセル・ブレーキなど細かに調節するとのこと。
25kmで水3トン “コスパ悪い”乗り物「SLの運転ってどのくらい難しいの?」――東武に聞いてみた | 文春オンライン
こちらの記事にある

SLは五感で運転する、と言うんです。音を聞きながら調子をうかがって、その日その日にあわせて対応しながら動かしていく感じです
(中略)
同じ日は二度とない、まさに生き物を操るのと同じような感覚なのだ。

という言葉が非常に痺れました。
少し飛躍するかもしれないですが、遠野駅での点検時に僕も似たようなことを思いました。
整備士に体のあちこちを触られて、
「異常ありますかー?」「ないでーす」
「燃料足りてますかー?」「水が足りませーん」
などのように"対話"をしているように見えたのでした。SLが「お世話はお願いするけどみんなを運ぶのは任せて」と言っているように思えて、愛しくて堪らなかったのでした。
SLの声を聞く様を経験して、万物の魂を感じ取る宮沢賢治の世界観に、少しだけ近づくことができた気がします。

もう一つ感じた事がありました。
僕も含め、SLを前にした多くの人がスマホやカメラで写真を撮っていました。
それはきっと、「思い出を残しておきたいから」なのでしょう。撮った写真を見返せば、何年経っても当時を思い出せます。

僕は今、ざっくり言うとカメラを作る仕事に就いています。

「あ、今ここで向けられているカメラ、大半に仕事で関わっている
自分の仕事がみんなの思い出づくりに貢献できている
そして、自分自身が何よりその事に感謝している」

銀河鉄道の夜の中では、さそりが天に召されて星座になるエピソードが展開されます。
ある日さそりはいたちに襲われ、必死で逃げ延びるものの井戸に落ちて瀕死になってしまう。命尽きる寸前にさそりは、これまで自分もたくさんの虫を殺して食べて生きてきたのに、どうして自分の体を差し出していたちを生かしてやれなかったかと後悔の念に至る。自らの行いを改め、自身を犠牲に「みんなのほんとうの幸(さいわい)」のためにこの体を遣ってほしいと祈りを捧げた時、さそりの体は天に輝き始めるのだった。
さそりの献身に感銘を受けた2人の少年ジョバンニとカムパネルラも、「ほんとうのさいわいを探し求めていこう」と固く約束を交わすのでした。

ジョバンニとカムパネルラが求めた「ほんとうのさいわい」は、僕にとってはこの日この土地で見つけることができたのだと思います。

 

鉄道博物館

最後の大きなトピックとして、埼玉県にある鉄道博物館、通常「鉄博(てっぱく)」に行ってきた話をつらつら書いていこうと思います。ここまでは楽しげな乗車レポが続きましたが、ちゃんと"おべんきょ"もしないと研究じゃないですよね。
章立てもなく見知ったことをそのままダラダラと書いていく形式ですが、ここまで読んでくれているド変態なら読んでくれると信じています。

そんなわけで9月18日。
残暑というより本暑というべき暑さの中、埼玉県はさいたま市大宮区にやってきました。僕は地元が千葉、大学が都内、職場が神奈川なんですが、埼玉県って本当に来る用事がないですよね。(突然の燃料投下)

最寄駅はそのまま鉄道博物館駅。(バス停の命名か?)大宮駅から出るさいたまニューシャトルで一駅です。

さいたまニューシャトル新交通システムに分類される車両です。
新交通システムは、大都市交通網の輸送力向上を目指した、従来の交通機関とは異なる機能を持つ輸送機関全般のことを指します。広義にはモノレールやリニアモーターカーなどを、狭義にはニューシャトルもその様式である、AGT(Automated Guideway Transit、自動案内軌条式旅客輸送システム)を指します。一般の鉄道はレールの上を鉄車輪で走りますが、AGTはサイドについている案内輪が案内軌条に沿って回ることで走ります。また走行輪はゴムタイヤです。
ニューシャトルってどんなてつどう? | ニューシャトルの魅力 | 埼玉新都市交通株式会社 ニューシャトル
AGTのメリットは
・鉄道とバスの中間の輸送力を待ち、公共交通機関の混雑の分散を図れる
・線路は高架に建設するので自動車の道路とは棲み分け出来る上、建設費もそこまでかからない
・ゴムタイヤなので鉄道より騒音が少ない
・ゴムタイヤは鉄輪より摩擦が大きいので登坂しやすい、自動車と同じような高い加減速が可能
・鉄道よりも曲がりやすいので線路の曲率半径を小さく出来て小回りが効きやすい=都市部を細かく移動できて効率がいい
自動車の乗り回しやすさと鉄道には少し劣る程度の高い輸送力を併せ持ったとても素敵な乗り物です。
が、あまり全国に普及しているとは言えない現状ですね。ここらへんの事情は関係者に聞いてみないと分からないところではありますが、思ったほど建設費が安くならなかったとか、鉄道に比べて技術が成熟してないとか、色々理由はありそうです。

まだ鉄博に着いてすらないのに説明が入ってしまいましたが乗り込んでいきます。
調べた通り、ゴムタイヤの擦れる音や、エグいカーブ、直線区間の急加速などがあって、普段乗ってる鉄道とは全く違う不思議な感覚がありました。
気持ちとしてはジェットコースターが頂上に向かう時の揺られ方。面白い体験になりました。

さて、前置きが少し入りましたが鉄道博物館駅に到着。
博物館に入る前から既に展示がたくさんありました。
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D51
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いろんな規格の車輪
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床が時刻表になってるのオシャレっすね〜

ずんずん入口に進んでいってチケットを買いました。
この時は13時ごろ。閉館まで4時間あるのでゆっくり見れるだろうと余裕を持ってこの時間に来ました。
なんですが、完全に見積もりを誤っていました。結論から言うと、閉館まで居たにもかかわらず半分しか回れませんでした

さて、館内に入っていくと目に飛び込んでくる数々の車両たち!
通勤列車や新幹線をはじめ、旧車、寝台列車やSLなど多岐にわたっています。

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壁面には鉄道関連の年表とそれにまつわる鉄道模型も。精読してたら時間がないのでここは流し見でした。
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各展示を回りたい気持ちをグッと堪え、まずは腹ごしらえをします。
館内に併設されている、食堂車を模したレストランにて、デミグラスオムライスをいただきました。味もさることながら、高級感あふれる概観も楽しめました。
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1人なのとライティングのせいで淋しさが増してる気がしますが気にしたら負けです。
国鉄時代はこういった食堂車が普通に連結されていたんですね。現代だと衛生観点とかガス電気設備の安全面とか長時間居座る客がいてクレーム殺到なんだろうな〜と妄想すると、無くてもよかったという安堵の気持ちが強いです。

お腹も満たしたのでここからは気になった展示を挙げていきます。

63系(73系)の座席
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63系戦時中に生み出された「簡素に作れて」「たくさん運べる」形の車両です。
現代の通勤電車の座席の原型にもなっていて、なるほど我々社畜兵士たちは戦地に赴くが如く通勤列車に押し込まれて出勤していたのかと思うと乾いた笑いしか出ません。
63系は戦中戦後に高い輸送力で活躍していましたが、車両火災を起こして多くの死者を出す大事故を起こしてしまいました。簡素な作りのせいで乗客の脱出経路が十分に確保できていなかったことが原因でした。
この構造は、利便性という"現代でも通用する知恵"と、安全性の欠陥という"現代では絶対に通用しない知恵"が共存しているのがとても面白いです。
製造費を極限まで削り、輸送力を最大化すればそれが"最適"かというとそうではありません。平時に運用している分にはそれで上手くいっているように「見える」ので問題ないと錯覚しがちですが、非常時に問題がようやく顕在化するのでは手遅れです。人命に関わる場面ではそれは尚更。安かろう悪かろうではダメなのです。
ただし、事故を起こしたからといって頭ごなしに全てを否定するのもナンセンス。どの箇所が真因か安全か、適切な評価・フィードバックで次に繋げるのが最も大切だと思います。

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電車線は線路の上に張ってある、電車に電気を届ける配線設備です。
今までの私といえば、電車は電気で動くという小学一年生程度の理解しかしてなく、じゃあその電気を届ける方法は?なぞ考えたことなかったのです。能天気に生きてる弊害ですね。
そんなわけで自分なりに調べたまとめを置いておきます。

解りやすすぎる参考。
電車線の仕事とは | 株式会社東京電気商会

発電所(変電所)から送られてきた高電圧の電気は、まず「き電線」の中を流れていきます。き電線からは一定間隔で分岐線が設けられていて、き電線の少し下に張ってあるトロリー線に電流の一部を流します。このトロリー線にパンタグラフ接触させることで電車内に電流を流し、最終的に車輪を伝ってレールから変電所に帰っていくという回路になっています。
電車線路の様々な設備
トロリー線が+極、レールが-極になっているんですね。レールって走らせる以外の役割があることを初めて知りました。
ただ、電柱を建ててその間にトロリー線だけを張ってしまうと、中間が自重でカテナリー状に弛んでしまいます。町中の電線とかと同じですね。トロリー線を擦って電車は走っていくので、当然地面と並行に張っていないとパンタグラフがうまく接触できずに走り辛くてしゃーない訳です。
そこで地面と並行に支えるために使われるのが吊架線。いわゆる吊り橋と大体同じ形状のものがオーソドックスみたいです。吊架線は普通に張って弛ませて、そこからトロリー線が水平になるようにハンガーで掴むんですね。
掴まれるトロリー線にも一工夫あって、普通の電線のように円柱形だとぐるっと一周全部を掴まないといけないんですが、そうするとパンタグラフとハンガーが接触してしまうので良くない。なので上部にハンガー用のミゾを作り、UFOキャッチャーみたいに吊っているようです。なるほどすごい。


こう聞いてると、き電線は何のためにあるの?って思いそうなんですが、ちゃんと意味があるんですね。
電車に流す電気は1500Vとかの高電圧なので消費電流も大きくなります。電線に電流が流れると、電気抵抗と電流の2乗に比例したジュール熱が発生します。熱はエネルギーをロスするだけでなく断線の原因などにもなるので、熱を抑えるために電線の抵抗を下げたいところ。しかし、長さと素材は変わらないので電線を太く(断面積を大きく)する他ない訳ですが、そうすると重くなって弛んでしまいます。上で書いた通りトロリー線は弛ませたくないのでトロリー線を太くするわけにはいきません。
そこで、電車と接触しない位置に太い(抵抗の低い)電線を渡し、そこに大電流を流して、トロリー線に少しづつ供給する方式になっているようです。
電車が高密度で走るには : 電車線屋による電験一種への挑戦

トロリー線とパンタグラフは走行中擦られ続けるので、だんだん摩耗していき、最終的には交換工事がなされます。走行速度などにもよりますが、パンタグラフは半年に一回交換、トロリー線の方は結構強く10年以上保つ程度とのことでした。でも、数十年生きてきてその工事の現場を一度も見たことがないということは、一般人が見ることがない深夜などに点検・工事をしている人がいるということですよね。知らないところで生活を支えてくれている人がいる。感謝です。

ここからは気になったこと。(調べきれていないこと)
トロリー線は端っこで自動張力調整装置によって適切なテンションで張られる仕組みになっています。パンタグラフの押し上げる力に対抗する力もそうですが、気温や日照起因の温度変化による伸び縮みを補正する役割もあります。
ただ、テンションはいいとして、温度上昇による電気抵抗の悪化は気にならないんでしょうか?熱もそうだし、IRドロップも増えそうですが、1500Vの高電圧からすれば微差なのかしらん?トロリー線の素材は基本銅と、用途に応じてスズや銀との合金などが使われているようで、銅ならそこまで…と思うのですが、グランド側のレールは大半が鉄で出来ており、こっちは結構気になります。

それから、街中の電線は風による揺れや雪・氷が付着した時の対策が行われていることもあるのですが、電車線でも同じように対策されてるんでしょうか。雪国地域に行ったときは気にしてみてみたいと思います。
電線のアレは何?/The Mysterious Objects on Power Lines - YouTube

一個のトピックで色々書きすぎですね。サクサク行きましょう。

鉄道の歴史や装置解説エリアに入っていきました。
ここが本当に見どころが多い事多い事。時代ごとに区分されて過去から辿っていく展示形式なんですが、全体の2割も見れてないです。悔しい。

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19世紀初頭にトレビシックによって作られた蒸気機関車『キャッチミーフーキャン号』。かなり大胆なネーミングしてますが、当時の最高時速19kmらしいので人間が走っても捕まえられそうなのが皮肉ですね。

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昔の蒸気機関の図面や、時刻表など。書き込みの量がエグい…。現代だとこういうのってCADとか専用のソフトとか使って管理するんでしょうか。

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ヤーポン巻尺。今でこそメートルが基本になってますが、当時は欧米で設計された図面をもとに製造する必要があったでしょうから、MK単位はもとより尺貫に直すなんて面倒な事はしてなかったのかと想像。自分達がわかりやすい単位にしようとして、誤って読み違えでもして製造が全てお釈迦になったとしたら、お雇いの技術者はカンカンになって国へ帰ってしまいそうです。いや、ヤーポンを使う方が悪いのでは?
加えて、下にあるような手帖のように最先端の測量の理論も英語で書かれているし、本当に一握りの一流日本人技術者が苦労して学んでいたと言う事ですよね。三角関数を高校生で教わる今とはまるで教育が違うので。

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腕木式信号機と色灯式(ここでは単灯式)信号機。腕木式は腕木を上下させる&夜間にはランプ+色付きレンズで信号を現示するタイプのものですが、人力制御による手間やミスなどに起因して、現代ではほぼ姿を消し、色灯式に置き換わっています。
腕木式信号機 その1腕木式信号機 その1
色灯も電球からLEDに置き換わるなど時代に合わせて進化しているので、そのうち物理機構も消えてAR停止信号とか現れたらいいなぁと身勝手に想像してます。

信号に関連して、ATSの解説もありました。ATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)はその名の通り、赤信号にもかかわらず列車が冒進しようとした時に自動でブレーキが作動するシステムになります。不注意、悪天候、何らかの理由で運転士が意識を失う、などにより信号を無視してしまった場合でも、事故を未然に防ぐための機械です。
信号の手前の線路に地上子が設置してあり、列車が地上子の上を通過した際に制御情報が車内に送られて、運転室の警報器が鳴ることで運転士にブレーキ動作を促します。警報から5秒経ってもブレーキが行われない場合に機械によるブレーキがかかるという仕組みになっています。
電車の保安装置って何!?その1


地上子。線路でよく見るやつ

ATSが全国に広く導入されるようになったのは、1962年に起きた「三河島事故」が大きなきっかけであるとされるようです。事故の詳細は立ち入りませんが、赤信号を冒進した貨物列車が多重衝突を起こし、死者160名にのぼる大惨事になってしまいました。被害が大きくなってしまった要因は様々あれど、直接的な根本原因としては赤信号で停止できなかった列車にあるとして、当時の国鉄がATSの開発を急いだとのことでした。
 自分たちが安全に利用できているのも、悲惨な事故の教訓の上に成り立っていると思うとなかなか複雑な感情になります。

ATSに関してどの解説を見ても、「ATSの歴史は鉄道事故の歴史」の文言を目にします。この動画のようにたくさんの事故例を見ていると、当時の技術者、鉄道会社職員、政府、遺族の方々などが、二度と事故を起こすまいと努力されたことは想像に難くありません。
世の中に大きな衝撃を与えた鉄道事故総まとめ【ゆっくり解説・総集編】 - YouTube
事故のたびにATSは改良を重ね、走行速度を検知して適切なブレーキがかかるようにしたり、非常ブレーキを使わずに常用ブレーキの範囲内で安全に停止できるパターンを計算するものなど、事故を防ぐための適切な開発努力が行われてきているのです。また、停止だけでなく加減速も行うATCや、発車なども自動で運転するATOなど用途の違うものも様々生み出されています。
ですが、人災による事故も少なくありません。怠惰・慢心・焦りといった心理的要因、組織の体質、法律・マニュアルの整備の遅れなど、単に技術がなかったからではない事故も多いです。上に書いた動作方法もあくまで警報で促すだけであって、運転士が諸般の操作を誤ったり故意に違反しようとすれば全く効果が発揮されません。そのせいでATSが使われ始めた後でも大きな列車事故は起きてしまっていたようです。
自分が技術屋のためこういった問題を技術だけで解決しようと考えがちですが、多角的な視点の重要さを改めて感じます。

歴史解説エリアはまだまだあったんですが時間がなく、惜しみながら車両展示エリアへと移ります。

エリアの中央には転車台に乗った蒸気機関のC57が設置してありました。定刻になると転車台が回転しながら汽笛を鳴らすパフォーマンスがあったのですが、室内で爆音で響き渡る汽笛に、子供たちが驚いて軒並み大号泣していたのが笑えてなりませんでした。強く生きて。
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他にも立ち並ぶ車両。

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アメリカで生まれ北海道で活躍した蒸気機関車の『弁慶号』。ローマ字BNKEIがちょっとシュール。

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こちらはED40の縮小板の模型で、長野県と群馬県を結ぶ「碓氷峠」を越えるために活躍した国内初の電気機関車です。
蒸気機関車だと峠内のトンネルで煙が充満して良くないので、蒸気を出さずに電気で走行する機関車に置き換わったようです。集電方法も地下鉄の時と同じ第三軌条と、架線を組み合わせたハイブリッドタイプです。おぉ知ってる知ってる。
また、最も特徴的なのは、急勾配を登り降りする時の補助として用いられるアプト式と呼ばれる歯車がついていることです。機関車の動力に加えて、歯型が付いたラックレールに車両のピニオンギアを噛ませて登る方式です。
現在はこの路線は廃止されており、日本で現役のアプト式大井川鐵道のみとなっています。大井川鐵道はいつか行ってみたいです。

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こちらは天皇や海外の国賓が御乗車なさった御料車。当たり前ですが我々平民が乗る車両とは装飾が桁外れに豪華でした。

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キハ41300のモダンな内装
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新幹線(0系)の先頭車
今回、新幹線についてはあまり調べられてません。新幹線はその速度や運行本数の多さにも関わらず、開業以来乗車中の旅客の死亡事故ゼロという「安全神話」が打ち立てられるほどのメチャすごいやつです。また、これまでの新幹線を上回る速度のリニアモーターカーの開業も目前に迫っています。では何故それほど安全でいられるのか。宿題として調べたいことはたくさんあります。

さて、こうやっていろいろと見て回っているうちに閉館30分前鉄博にはまだ科学・未来・仕事エリアが残されています

・・・リベンジするしかない。ここまできたら悲しみを通り越して高笑いしながら帰路につきました。

まとめの感想も半分だけですが置いておきます。

まず、情報量の多さに目を見張りました。もちろん自分の知識量が少なすぎて、調べ調べ見ていたのが時間が足りなくなった最大の原因ですが、よっぽどの知識人かよっぽど興味ない人でなければ1日で回るのは厳しいですね。子連れも多く、鉄道大好きな子にとっては毎週末来たって飽きずに見てられるんじゃないでしょうか。

それから博物館全般に言えることですが、実際の現場で活躍している実物を間近で見れることの喜びもありますよね。本やwebで調べた知識も実際に目で見てみると違う発見があったりするもの。これまでの観察と知識を結び付けることができて良き日にすることができました。
繰り返しになりますが、リベンジあるのみです。

小さなトピックなど

箇条書き的に体験したこととか気になったこととかを書いていきます。

幕張豊砂駅

2023年3月18日、京葉線新習志野駅海浜幕張駅の中間に、『幕張豊砂駅』が新規開業しました。
この駅のおかげで、駅の目の前にあるイオンモール幕張新都心に非常にアクセスしやすくなっています。また、お隣の海浜幕張駅近くのマリンスタジアム幕張メッセで大きなイベントがあると非常に混雑してしまうので、混雑の緩和の効果も見込んでいるようです。幕張がどんどん発展していく!
これはたまたまですが、開業翌日に千葉にいた僕はすぐさま友人を連れて幕張豊砂駅に向かうことにしました。
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この駅はホームの構造が面白くて、上り線は高架、下り線は地上にホームがある2階建ての構造になっています。


案内板も2階建ての表示に
こうなった理由としては、近くに大きな車両基地があること。下り線から車両基地に向かう線路を邪魔しないために上り線が高架になっており、それがそのまま駅のホームの構造に接続していることに起因しているそうです。
幕張豊砂駅開業! なぜ新駅? 幕張新都心はどう変わる? JR京葉線 | NHK

いすみ鉄道

4月には、千葉県いすみ市を走るいすみ鉄道に乗車しました。
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いすみ300形

キハ20

目当ては沿線に咲く菜の花と鉄道のコラボレーションだったのですが、このシーズンはあまり菜の花が咲いておらず、ちょっと残念でした。
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車窓から見える菜の花。十分きれいだけどね。

代わりに虫たちがせっせと花の蜜を取りに来ていて、いい春の訪れを感じることができました。のんびりローカル路線の旅での景色はやはり特別な癒しを与えてくれます。
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渋谷駅

渋谷駅の山手線ホームはこれまで内回りと外回りのホームが分かれていたのですが、渋谷駅の再開発のため、この2つのホームを1つにする工事が2023年の1月7日~9日にかけて行われました。

JR東日本のHPより

その時の工事の様子がYoutubeに上がっていましたが、圧巻の内容でした。
JR山手線 渋谷駅 第4回線路切換工事の舞台裏、全部見せます! - YouTube
こんな大規模な工事が整然と処理されていく様、重く長い線路を数十人単位でミリ単位で調節する精密さ、大きな工事車両や器具をミスなく使いこなす技術、どれをとっても素晴らしいの一言でした。また、時間内にすべての作業を問題なく終えるために、作業員の方たちは何度もシミュレーションして動きを確認していたと言います。

これは工事からはしばらく経った後の写真ですが、それまで使われていた外回りホームは封鎖されていました。
11月にはさらに線路下の連絡通路の勾配を平坦にするために線路を高くする工事も行われ、渋谷駅の開発は一区切りついたようです。
誰かの仕事で街が変わっていく。その様をしっかり見届けていきたいです。

車両形式

これはなんてことないんですが、八王子駅で見かけたタンク貨車。車両形式はタンクのタと積載量25トン以上を表すキで「タキ」と書いてありました。

車両形式についてもこの年に調べて初めてちゃんと理解しました。
今さら聞けない鉄道車両形式の基礎知識 [鉄道] All About

何気なく見ていた文字列でも「クハ」とか「モハ」だったので、タキなんて車両形式もあるのかと知見を得ました。

神田駅

2023年10月2日から、JR神田駅の山手線ホームの発車メロディが、アース製薬モンダミンのメロディに代わるというニュースがありました。
山手線発車時にモンダミンCM曲 アース製薬本社前のJR神田駅(共同通信) - Yahoo!ニュース
たまたまその週末に神田で用事があった僕は、予定より1本早い電車に乗って神田に向かい、変更されたばかりのメロディをこの耳でしっかり聴いてきたのでした。
普段の自分であればこういうニュースを目にしても、「ふ~ん。」と流してしまうところだったと思うのですが、
やはり「テーマ」を持って日々を生きていると、今まで受容してこなかった情報も、能動的にキャッチしようとするムーブが働くのが面白いなと感じました。

四ツ谷駅と外濠散策

四ツ谷駅に設置してある、「江戸城外堀史跡展示広場」です。
江戸時代に整備された外濠と、鉄道(主に中央線)の歴史的な関係性を解説しているパネルになります。また、外濠に沿って散策するルートの案内もありました。行くっきゃない。
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川沿いに色づく紅葉がほとんど落ち切っている中、向こう岸に見える中央線のオレンジが、まだこの紅葉を終わらせまいと繋ぎとめているかのように見えてエモくなりました。クサすぎ?
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市ヶ谷駅
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飯田橋駅の非常に湾曲したホームと線路。地図で見ると丸わかりですね。この形も外濠に沿って鉄道が敷設されたことに起因しているようです。

上でも書いていますが、鉄道と地理との深い関わりは知れば知るほど面白いです。こういった知識はブラタモリでゲットしていたんですけど、終了してしまいましたね…。
都心の中央線、なぜ直線でなく「S字」を描くのか 鉄道建設には江戸城外濠の「遺産」が役立った | 駅・再開発 | 東洋経済オンライン

ホームドア

近年多くの駅で設置が進められているホームドア。ここにも技術が詰まっています。都営地下鉄線、小田急線などの一部駅で、QRコードを使った開閉システムが活用されています。
ホーム天井にカメラを設置して、車両の扉に貼ってあるQRコードを認識することで扉を開閉します。開閉のために車両の無線装置を使わずに済むこと、維持費もシートを張り替えるだけなのでホームドア設置のコストダウンにも貢献しています。また、車両数、1両のドア数、どの扉を開閉すべきかなどの車両情報もコードでやり取りしており、制御もしやすくなっています。
誕生から30年のQRコード 地下鉄ホームドアに活用で20億円削減 カギは特許技術の開放(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース


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QRコード
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判別するカメラ

このシステムは都の交通局職員がアイデアを出したとのことで驚きです。
ホームドアは安全面で効果が高い反面、新規設置に費用が掛かることも事実。コストダウンのブレイクスルーが起きてどんどん導入する駅が増えていけば利用者も鉄道会社もWin-Winですね。

総まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。
非常に長くなってしまいましたが、以上が僕がこの一年で「鉄道」について学んだ・体験したことになります。泣く泣くはしょったこと、まだ理解が甘く記事には書けなかったこと、たくさんあります。
初めに書きましたが、これまで鉄道に関して本当にズブの素人もいいとこだった人間ですが、それでもこれだけ多くの学びを得ることができてとてもいい機会になったと思っています。
とはいえこの一年だけでやめるつもりもなく、まだまだこれからやりたいこと、やり残したこと、どんどん体験していきたいと思っています。

記事に書いたことだけでもこれだけあるので、今は思いついていない深堀できることは継続していきたいと思います。

2023年のテーマは鉄道でしたが、2024年のテーマは何にしようかな。
友人が国立科学博物館でやっていた和食展が面白かったと言っていたので、『食の歴史』とか面白そうですね。いかにして現代では安全で美味しい食物をいつでも食べられるようになったのか、とか、大きな問いなだけあって紐解きがいがありそうです。


この活動を通して感じたことも書いておきます。

まず、途中にも書きましたが、人生にテーマを設定するだけで、その関連情報を手に入れようとする力が働くことに驚きました。逆に、今までどれだけ受動的に生きてきたのかという怠慢を自身によって突き付けられて、軽く絶望しました。
この記事で書いてきたことも、もちろんそれまでに知っていた知識もあったのですが、それと比にならないくらい新しい知識の方が圧倒的に多く、「受動的な知識の何たる狭き世界の認識か」と思わずにはいられませんでした。
でも、これこそ生きている醍醐味。知らなかった世界の広さ、情報量の多さに打ち拉がれたとしても、一歩ずつ知識を獲得していき、少しづつその世界を理解していったとき、新たな景色が見えるようになるのです。
今回は、鉄道の持つ魅力――心臓となる動力を、洗練された技術を、生活を支える整備を、並々ならぬ奮闘を、語り継がれる歴史を、人々にもたらす感動を、未来を背負う活力を、それらの一端を理解し直に感じ取ることができました。
そして同時にそれらに携わる仕事をしている方々の偉大さをちょっとでも理解できるようになったことは、自分にとって成長かなと感じています。



そしてこれは最も重要で重大な事なんですが、

アウトプットは定期的に計画的に行おう!!!!!!

気づいてる方もいらっしゃるかもしれませんが、この記事、2023年のまとめ記事として書き出したものです。
当然、2023年の年末か、遅くとも2024年の年始には出すべき記事なんですが、この文章を執筆している時点で2024年の3月は下旬に入っています。大遅刻にもほどがあります。
ここまで遅れた理由としては、

  1. 単純に筆が遅い。
  2. 執筆を始めてから少しして生活が大きく変わった。
  3. 新しい知識とはいえ間違ったことは書けないので、正しい知識をちゃんとインプットしてから書く、の連続だったので執筆が進まなかった。
  4. 圧倒的に執筆量の見積もりを間違えていた。

下に行くにつれて原因の割合が大きくなっています。

この記事の書き出しは2023年の12月中旬。まあ2週間あれば全部書ききれるだろwと高をくくっていたのですが、年末の時点でJR大回り乗車の章すら書き終わっていませんでした。無理ゲー過ぎる。
何とか一応すべて書きたいことは書ききりましたが、どう考えても執筆時点と公開時点で時系列がかみ合ってない文章がいくつかあるので、そこは平に謝ることしかできません。
もっと前々から、今回の記事の形式なら体験した次の日にでも下書きくらいは残しときなさいや、と強く自分を叱責することにします。次はないように善処します。


そんなところで今回の記事を締めさせていただきたいと思います。
ここまで読んでくださり本当に、本当にありがとうございました。